一般社団法人 グローカル政策研究所

阿部孝則の『寡黙な麻雀王者』

第28回連載

コロナのため雀荘勤務を3ヶ月ほど休んでいた私でしたが、感染者数は増えては減り、減っては増えの繰り返しで収束する気配はありません。
経済的にいつまでも休んでいるわけにもいかず強行手段をとらざるを得ない状況になってきています。
私は母とも相談し仕事に復帰することを決めます。
持病がある母は不安だったと思いますが背に腹はかえられない状況であることは理解してくれました。
仕事に復帰してみると雀荘に遊びに来られるお客様が全体的に減っているように感じられました。
このご時世なら当然のことかもしれません。
更にお店は営業時間の短縮などを余儀なくされ少し人員があまっている状況になっていました。
私もその影響を受けコロナ前より勤務時間や勤務地が減らされることになってしまいます。
先行きの不安はありましたがなんとかやって行くしかありません。
一方RMUの活動も制限を余儀なくされていました。
まず年に10回行われるカップ戦。
これは1日で完結する大会形式の公式戦で他団体プロやアマチュアの方まで参加できるオールカマーの試合です。
しかし2020年はこれをしばらく開催を見送ることにします。
状況が変わればまた開催することも考えられていましたが結局2020年度は全てのカップ戦を中止にすることになってしまいます。
RMU会員だけで行われる試合については観戦者を入れない、マスク着用や手指や麻雀牌の消毒の徹底などの感染防止対策がとられなんとかとりおこなわれていました。
RMUのリーグ戦はこの頃A1、B1、B2、C1、C2、C3、D1の7クラスに分かれていました。
A1だけが通年リーグでB1以下は前期と後期に分かれる半期リーグとなっていました。
B1リーグで3位までに入賞した選手はクライマックスリーグに進出できます。
そこでA1リーグの5位までだった選手の計8名にて2日間に渡り短期のリーグ戦を行います。
そこでB1の選手が優勝すれば晴れてA1に昇級できるシステムです。
B1は半期制なので年に2回チャンスがあります。
しかし屈強のA1リーガー5人を相手に優勝するのは至難の業とも言えます。
迎え打つ立場の私も早く若い人達にA1に上がってきて欲しい反面、実力不足で上がってきて欲しくない気持ちがあり毎度複雑な想いにはなるのですが、麻雀で手心を加えるわけにはいきません。
そして現在Mリーグで活躍する松ヶ瀬さんもこの狭き門を潜り抜けA1入りしています。
私はコロナ前の2019年前期のクライマックスリーグで優勝しています。
そして今回は2020年後期のクライマックスリーグです。
コロナウィルスによる被害は甚大でとんでもない一年となった2020年度ではありました。
しかしこうして麻雀が打てているのですからとても幸せなことだといえるのでしょう。
クライマックスリーグは初日に1人5回戦打ち、2日目に1人2回戦を打ち下位4名が敗退となります。
残り4名で3回戦+新決勝により優勝者を決定します。
私は今回調子がとても悪く初日を8名中の最下位で終えます。
全くミスがなかったというわけではありませんでしたが正に戦いようがない状態でした。
2日目になり諦めているわけではありませんでしたがこの位置からでは当然厳しい戦いになります。
私が上位4名に残るにはまず大きなトップでの2連勝は最低条件で尚且つ上位にいる誰かを沈めなければなりません。
しかしこういった条件戦では通常の戦いと異なる事がよく起きます。
それは負けている側は上がっても意味のない上がりはしなくなったり、勝っている側は無理な勝負はしなくなるからです。
ポイントを稼ぐ事はもちろん大事ですがここではまず上位4名に残る事が最優先事項になります。
ですから局面が歪む事が多くなり稀に奇跡は起きるものなのです。
私は60,000点70,000点のトップを取り上位にいた1人を引きずり下ろしトータル4位に滑り込んだのです。
こうなると不思議なもので私の勢いは止まらなくなります。
気分とツキの関連性は分かりませんが人間である以上は機械やAIのように一定には打てないのは事実だと思います。
決勝1回戦はトータル1位の選手をラスにして私がトップというトップラスを決めるという理想的な形で終了します。
私はトータル3位まで浮上しますがトータル1位の選手にはまだまだ余裕があります。
トータルで大きくリードしている選手は無理な勝負をしなくなりがちになります。
なのでここまではまあまあある話です。
続く2回戦では私は2着に甘んじますがトータル1位の選手がラスとなりトータル1位までポイントはグッと縮まります。
これで全員に優勝の目が出てきました。
2連続ラスを引いたトータル1位の選手にも少し焦りの色が見えます。
3回戦目も私は大きめのトップをとりトータル1位の選手を3着に沈めます。
残すは新決勝のみとなり1日目終了時に最下位の私から1位まで200ポイント近くあった差は10ポイント弱にまで肉薄していました。
新決勝システムとはRMUが新しく提案する決勝戦の最終決着方法です。
基本的には一局麻雀です。
トータル1位の人は点数関係なく上がれば優勝です。
2位以下の人はトータル1位のポイントを逆転する上がりをすれば優勝になります。
この2つの条件を満たさない上がりが出た時は条件を満たす上がりが出るまで続行します。
新決勝その1
トータル1位の選手が上がりに行き前に出たところを他の選手が捕まえます。
3900点の放銃で私との差は数千点になります。
その2
私は脇から2000点を上がり親番を迎えます。
その3
私には軽くて早い手が入り早々に仕掛けます。
そしてテンパイした私はすぐにツモりトータル1位を逆転する上がりを決めます。
こうして私は2020後期クライマックスリーグを過去に類を見ないほどの大逆転劇で優勝したのでした。
2019前期に続きクライマックスリーグ2度目の戴冠となり私自身もやれることはまだまだ色々あると改めて思うのでした。

第29回連載へ続く...

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