一般社団法人 グローカル政策研究所

阿部孝則の『寡黙な麻雀王者』

第16回連載

鳳凰位3連覇、師匠の死、そして結婚をほぼ同時期に経験することになった私。
この頃は麻雀店勤務と公式戦の対局や運営そしてコナミのアーケードゲーム麻雀格闘倶楽部の対局などをこなす毎日でした。
とても充実していた毎日を過ごしていたのだと思いますが本人にその自覚はなく、ただただ慌ただしい毎日を過ごしていくのに一生懸命だったように思います。

この日鳳凰位戦A 1リーグの立会人をしていた私はいつも通り気になる人やポイント上位の人の後ろで観戦をしていました。
今節は土田浩翔さんをじっくり観戦しようと思っていました。
するとこの局土田さんは凡人の私には理解できない打牌と手筋を繰り返します。
『なんだこれ?!スゴいってか普通じゃない!!アガる気あるのか?』などと思って観ているとツモリ四暗刻の役満テンパイを果たしてしまいます。
『!!!』
土田さんのアガリ牌はまだ山にいます。
数巡後『ツモ』という静かな発声と共に土田さんのアガリ牌がその手牌の横に置かれます。
『8000,16000』
土田さん役満が炸裂しこの日で土田さんのトータルポイントは+200を越えます。
この一部始終を目の当たりにした私は
『なんなんだ?!この人は?!一体この人には何が見えているというのだ?!!』
そう思わずにはいられませんでした。
そしてもう1人
『いやー今日は4連勝しか出来なかったから+200にしか出来なかったな、ついてねー』
などと超ご機嫌で謳っているのが多井隆晴さんでした。
ここへ来てトータルが+200オーバーの2人は余程のことがない限り決定戦に勝ち上がってくるでしょう。
やり易い相手などそもそも居ないのですが私にとってはやり難い相手の2人がほぼ当確マークをつけてきました。
決定戦進出の椅子は事実上残り一席となり熾烈を極めていきます。

年が明け鳳凰位戦A 1リーグ全10節が終了、第22期鳳凰位決定戦に進出する3名が決定します。
土田浩翔さん多井隆晴さんそして3番目の椅子を勝ち取ったのは瀬戸熊直樹さんでした。
奇しくも全員がタイトル保持者であった経歴のある4人の対決となり、これは鳳凰位決定戦のような大きな舞台でもかなりレアなケースとなりました。

第22期鳳凰位決定戦 1日目
まず土田さんが飛び出す形となり反対に多井さんが大きく出遅れます。
私と瀬戸熊さんは中団につけるといったレース展開で初日が終了します。
2日目
私と瀬戸熊さんは土田さんに離されないように必死に食らいついて行きますが、多井さんは更に置いていかれる展開となってしまいます。
3人がプラスする中多井さん1人でマイナスを背負う形となり相当苦しそうです。
3日目
最終日のこの日全てが決まります。
17回戦のオーラス、トップを取ればトータルで土田さんを逆転できるとこまできていた私は焦りと疲れから親の瀬戸熊さんのヤミテンに放銃してしまいます。
この一局はいまだに後悔しているほど悔しい一局となって今も私の脳裏に焼きついています。
この半荘は瀬戸熊さんにトップをとられトータルは土田さん、瀬戸熊さん、私の三つ巴の戦いになっていました。
残るは最終18回戦のみです。
最終半荘らしく荒れた展開になりましたが、ラス親の私は親番で小さいながらもアガリを重ねついにトータルトップの土田さんまで1800点のところまで詰め寄ります。
そして運命の最終局、私は最初に出した答えを思い直し違う打牌選択をしてしまいます。
しかしこの牌が下家の土田さんに鳴かれてしまいます。
土田さんにアガられると終わってしまう私は打牌を制限される形になり苦しくなってしまいます。
挙句に私はテンパイすらとれずに流局となり私の鳳凰位決定戦は終了しました。
結果は準優勝でしたがなんとも情け無い形での敗戦となり、特に17回戦18回戦でやりようがあっただけに本当に悔やまれる対局になってしまいました。

しかし落ち込んだり感傷に浸っている暇はない、また一から出なおしだ。

第18回連載へ続く...

COLUMN

阿部孝則の『寡黙な麻雀王者』