一般社団法人 グローカル政策研究所

阿部孝則の『寡黙な麻雀王者』

第13回連載

前回でリーグ戦の仕組みについて説明をしたと思いますが、今回は団体そのものの仕組みなどを簡単ではありますが説明していこうと思います。
主要競技プロ団体はいくつかありますがどこも大体似たような仕組みになっています。
まず団体にはそれぞれスポンサーがついています。複数のスポンサーを持つ団体もあり、これがないと団体運営は相当厳しいものになると思われます。
スポンサーからの協賛金は主に試合の賞金や対局料に当てられます。
そして会員が支払う年会費や会場費は会場の使用料、運営等の人件費、役員等の人件費、資料や備品、団体が経営する雀荘の運営などに当てられます。
最近では団体を代表する人気プロや女流プロとのイベントを行ったりカレンダーやグッズ等を販売し収益を上げる団体も出てきています。


本題に戻りましょう。
初夏になり鳳凰位連覇をした私と十段位連覇をした河野さんそして師匠の安藤さんとは相変わらず共にする時間は長くなります。
しかしこの頃から安藤さんは体調の不良を訴え始めます。
食べものが喉を通らずほとんど食べていないと言うではありませんか。
たかが3センチ程度のカップメンの切れ端も飲み込めないと言うのです。
安藤さんが15年ほど前に患ったのは喉頭癌です。
私と河野さんの脳裏には嫌な予感しかよぎりません。
『病院に行きましょう安藤さん!』
『お願いですから行って下さい!』
しかし安藤さんは
『もうすぐ北海道で天元戦があるだろ?
お前達と行けるのを俺はすごく楽しみにしてる、だからそれが終わったら病院行くよ』
『もし今病院に行って入院でもさせられて万が一北海道に行けなくなったらつまらないからな、俺は天元戦で優勝するから!』
天元戦は北海道で行われるプロアマオープンの新しいタイトル戦で優勝賞金250万と競技麻雀のタイトル戦では破格な賞金設定になっています。
私達は病院に行くよう説得しましたが、安藤さんは天元戦の後にすると聞き入れる様子はありません。
安藤さんのことを気に掛けながらも私達3人はシード選手として北海道へ乗り込みます。
北海道1日目は麻雀大会で2日目3日目が天元戦の本戦になります。
安藤さんと私は本戦を何とかクリアして準決勝進出これに勝てば決勝進出です。
私は南3局まで決勝に行ける位置にいました。
しかし当面のライバルである土田プロに12000を直撃され逆転されてしまいます。
私は次局に中マチの国士無双をテンパイしますが流局。
そのまま土田プロが逃げ切り決勝進出となりました。
決勝進出の切符はすんでのところで私の手のひらからこぼれ落ちてしまったのです。
気が緩んだわけではない、しかし勝てた試合を落としてしまった私は本当に悔しかった。
そして準決勝の別卓で順当に勝ち上がりを決めた安藤さんと私が競り負けた土田さんそしてアマチュア2人という決勝戦のメンツ。
決勝戦は5回戦で翌日行われます。
その日の打ち上げでも安藤さんはほとんど食べものを口にできていない様子です。
お酒だけは飲めるようですし、やはり決勝進出は嬉しくないわけがないのでご機嫌には見えますが私達は心配でなりません。
翌日の決勝戦。
1人のアマチュアの方が緊張のためなのかマイナスをひとりで背負う形となり良いところ無くかなり苦しそうです。
勝負は安藤さん土田さんもう1人のアマチュアの三つ巴の展開となり最後まで読めない戦いとなっていきます。
途中雲行きが怪しくなり劣勢に立たされた安藤さんでしたが、その技術力の高さと粘り強さを存分に発揮し見事に優勝を果たすのです。
すごい!有言実行とはこのことだ格好良すぎる!!!
この日ばかりは私達は全てを忘れ明け方まで飲み明かしました。

第14回連載へ続く...

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