一般社団法人 グローカル政策研究所

阿部孝則の『寡黙な麻雀王者』

第11回連載

鳳凰位と日本オープンの二冠王になった私は新しいゲストの仕事や立会人の依頼そして試合のシード権や今まで出られなかったような試合の出場要請であったりと徐々に忙しくなり明らかに去年までとは環境が変わっていきます。
年度末に行われる鳳凰位決定戦が終わるとすぐに翌年度のリーグ戦が始まります。
鳳凰位戦はディフェンディング制のため鳳凰位になった私はリーグ戦を戦う必要がなく決定戦で挑戦者3名を迎え撃つ立場となります。
そのため現鳳凰位はA 1リーグの立会人をすることが義務付けられています。
この立会人はA 1リーグを間近で観戦することができ、気になる選手や勝ち上がって来ることが予想される選手などを重点的にチェックすることができます。
その選手の打ち筋やクセなど色々なことを間近で観察できること、又勝ち上がってくる選手が1年間どのような戦いをしてきたのかをじっくり観察、研究できることは鳳凰位の特権とも言えます。
私にとってA 1リーグの立会人はとても有意義な時間となっていきます。
そうこの場から今年の決定戦は既に始まっている!そんな気持ちで各選手を入念にチェックしていました。

夏の終わり頃から十段位戦が始まります。
十段位戦は段位によってシードがあるトーナメント方式のタイトル戦で鳳凰位戦と並び称される日本プロ麻雀連盟の二大タイトルでもあります。
私は前にも少し書かせて頂いたように第15期十段位戦で前原雄大さんに大逆転負けをして以来このタイトルには呪われたかのように縁が無くなっていきます。
第16期はオーラスの満貫ツモ条件をクリア出来ず藤崎智さんに敗れ3位。
第19期は河野高志さんに完敗の4位と決定戦まで進むものの勝ち切れないタイトルとなってしまっていました。
そして今年第20期は決定戦に進むことができませんでした。
十段位戦もディフェンディング制であるため河野さんは決定戦で挑戦者を迎え打ちます。
そして見事連覇を成し遂げます。
すごい、さすがに河野は強い。
友人でありライバルの活躍に歓喜と尊敬の念、そして少しばかりのプレッシャーを感じます。
俺も鳳凰位を連覇できるだろうか?
年明け早々には決定戦に勝ち上がってくるメンツも決まります。
私は第20期鳳凰位決定戦に向けて着々と準備を進めていきます。

翌年まだ肌寒さを感じる3月の終わり頃に鳳凰位決定戦は行なわれます。
1日目と2日目が終わり、首位にたったのは荒正義さんでした。
しかし私も微差の2位につけています。
ここまで冷静に対応できている、よく戦えていると言っていい。いける!
私はかなりの手応えを感じていました。
最終日も荒さんとのマッチレースとなっていきますが、どちらも大きく抜け出せずにいます。
正に我慢比べのようなとても苦しい状況です。
先に顔を上げたほうが負ける。
残りあと3回戦という勝負所の南1局北家の荒さんは仕掛けて逃げの体制に入ろうとします。
しかし親が長考します。
そして一度切りかけた牌を戻して別の牌を切ります。
捨て牌的にはピンズの一色手のテンパイに見えます。
もしチンイツなら18000点以上の大物手です。
荒さんの仕掛けもあり私はこの局は守備的に打っています。
しかしすでにテンパイを入れているであろう荒さんはこの親一連の動作を見て少考したあと親に通ってないピンズを切ります。
しかしこれが親の18000点に刺さります。
この時荒さんは少し口元を緩めふっと笑ったように私には見えました。
この半荘、私2着、荒さん4着となり私はついにトータルトップに立ちます。
そして次の半荘もトップを取った私はトータル2位の荒さんに大きく差をつけ最終戦に臨みます。
縦長の展開になった最終戦は淡々と進行していき波乱は起きずに終了します。
そして私は第19期に続き第20期と鳳凰位を連覇することができたのです。

激闘を終え嬉しさより疲労困ぱいの私でしたが、いつものように安藤さんや河野さんらも応援に駆けつけてくれています。
今夜も長くなりそうです。

第12回連載へ続く...

COLUMN

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