一般社団法人 グローカル政策研究所

阿部孝則の『寡黙な麻雀王者』

第10回連載

鳳凰位決定戦前夜はやはり気持ちが昂ぶってしまい中々寝付くことができませんでした。
先日の日本オープンで優勝したこともあり尚更だったのかも知れません。
私はワイルドターキーの濃いめの水割りを軽く飲んで寝ることにしました。
寝つきは悪かったものの翌朝はわりとすっきり目覚めることができました。
私は身支度を整え試合会場へと向かいます。
この頃の私は試合前に食事を摂らずに臨んでいました。その方が集中しやすいと思っていたからです。
思えば日本プロ麻雀連盟に入会してからリーグ戦の頂点である鳳凰位決定戦に進むまで15年の月日が過ぎようとしています。
いよいよ開幕です。
1日目、1回戦の序盤ではさすがに少しの緊張はあったものの、コンディションは悪くありませんでした。
一戦一戦着実にポイントを積み重ねて行きます。
そして1日目が終了。
私はトータルポイントで僅差の2位につけます。
感触としては悪くない、むしろ上出来まである。
と私自身としてはかなりの手応えを感じて1日目の対局を終えています。
2日目に入っても私は好調をキープし、一時的にトータルトップに立つなどしますが結果的にはトータル2位で2日目も終了します。
部屋に帰り1人で飲んでいると携帯が鳴ります。
『はい阿部です』
『どうだった?』
簡単な試合展開や感想などを話すと
『そうか、頑張れ!最終日は応援に行くからな!』
と安藤さんから激励のお電話です。
そして3日目の朝。
3日間計18回戦の鳳凰位決定戦が今日で終わります。
泣いても笑っても今日で終わる。
絶対に後悔するような打牌だけはしない!
私はそう心に誓い会場に向かいます。
会場は当時存在した赤坂の山王飯店で行われます。
高級中華料理店で行われる対局はホテルで行われる対局のようです。
会場に到着するとすでに麻雀卓が設置され運営や取材陣、そしてギャラリーの人達もすでに集まり始めています。
鳳凰位決定戦最終日ともなればそれなりに注目度は高くなります。
この異様とも言える雰囲気のせいでさらに緊張感は高まります。
合間に吸うタバコもやたらと増えていきます。
すると横から誰かが肩を叩きます。
『おう!よく寝れたか?なんだ緊張してるのか?!』
と安藤さんも朝から応援に駆けつけてくれます。
対局開始時間となり
『よし!行ってこい!』
と安藤さんに背中を押され着席します。
立会人の合図により一礼して対局開始となります。
やはり序盤の緊張はあったもののすぐに落ち着きを取り戻すと私は15回戦でトータルトップに並びます。
そして16回戦でトータルトップに立ちます。
更に17回戦で2位との差を一気に広げかなり優位なポイント差をつけ最終18回戦に臨みます。
最終戦、波乱は起きず最終局が終わるとすぐ後ろで観戦していた安藤さんが私の頭を撫で付け『良くやった!強くなったな!おめでとう‼︎』
と言ってくださいました。
そして一斉に拍手が巻き起こります。
私は遂に日本プロ麻雀連盟最高峰のタイトル第19期鳳凰位の称号を手にすることができたのです。

打ち上げの席が設けられ今日の対局の話などで盛り上がります。
色々な方々からお祝いやお褒めの言葉を頂きますが、酔っているせいなのかよし!勝った!とかやった!という実感はまるでなくただただ疲れたのとホッとしたというのが本音だったように思います。
お酒はいつもよりおいしく感じたのは事実ですが。
まぁ当然今日は夜が明けるまで帰れないでしょう。

第11回連載へ続く...

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