一般社団法人 グローカル政策研究所

阿部孝則の『寡黙な麻雀王者』

第8回連載

麻雀をはじめてぶつかる壁がある。計算だ。はじめは点数計算。自分があがった役の点数、まずこれがややこしい。暗記はもちろん麻雀を打ちながら同時に複数のことを考えなければいけない。
これができるようになっても条件計算がある。相手との点差が現状何点で自分が何点あがれば捲れるのか、何着になれるのか。
それだけではない。トーナメントや足切りのある試合では半荘の中での条件以外に試合全体のトータルポイントも把握し、計算しなければならない。
私は計算があまり得意ではないので、今もこれに悩まされている。ただでさえ複雑な計算を電卓などなしに暗算で、しかも同時進行で行わなければいけないのだ。間違えた計算のまま打ち、他人の順位を変えてしまうようなアガりをすればずっと陰口を叩かれるのも事実だ、というよりはこの計算が完璧にできなければプロ失格なのだ。
私もプロを名乗っている以上苦手などと言っている場合ではないのはよくわかってる。小学生の計算ドリルをやり直せと師匠に叱られたこともある。

足し算と引き算って難しいよなぁ、と改めて思う。
麻雀においてもだが、日常の生活でのそれらもまた難しい。
物事は足しすぎても引きすぎてもうまくいかないと私は思う。その人個人の感性やセンスにもよるだろうが、何事もバランスなのだ。
そのバランスが取れている人は一般にセンスが良いと言われているのではないか。

私はファッションがとても好きで洋服やアクセサリー、バッグなどたくさん集めてしまう。問題はこれらをどう組み合わせてその日のコーディネートとするか、完成形とするかである。
可愛いものや高価なものを仮にたくさん持っていたとしても、全て持てばいいというわけではない。足し算だけではいわゆる"おしゃれ"な完成形にはならない。何かを引き算したときにバランスが生まれる。
ただ日本にいて通りすがりの人たちのファッションを見ると、引き算のしすぎのようにも感じる。実用性を1番に考え、デザインはシンプルに。
それではファッションではない。これもバランスが悪い。

例えば秋葉原や池袋のカルチャーとして女子の中で流行っている"痛バッグ"。推しの缶バッジを50〜100個ほど1つのカバンを埋めるように敷き詰め、さらにマスコットやキーホルダーを付ける。推しへの愛と忠誠を誓うバッグだが、とてもお金と手間がかかる。私も何個か作ったが、大体1つ平均して5〜6万円以上はかかるだろう。
これは典型的な足し算アイテムだ。
ただ、今の女子はこれをとても上手く使いおしゃれに使いこなしている。
洋服に柄物を使わず、ただ形や色、スタイルがよく見えるようにこだわる。あくまでシンプルだが可愛らしい女子らしいスタイルに、足し算だらけの痛バッグを持つ。いまやオタク女子の定番スタイルだが、これは日本が他国に誇れるほどのバランスの良いおしゃれなスタイルだと思う。

足し算引き算はファッションだけではない。人間関係となるともっとややこしいので私は考えたくない。麻雀の計算もできればしたくない。
でもやらないとやっていけないので真剣に頑張ろうと改めて思う今日この頃であった。

第9回連載へ続く...

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