一般社団法人 グローカル政策研究所

町田徹 21世紀のエピグラム

世界人口の80億人突破が迫ることとは。
日本は処方箋を示せるのか?

 国連は11月15日、「世界の人口が80億人に達した」と発表した。振り返ると、2010年に70億人に達した世界の人口は、それから12年間で10億人も増加した。今後は、2086年まで増え続けて、その時点で104億人に達し、ピークを迎えると推計している。
 ただ、人口の増加ペースの鈍化は顕著だ。1960年代に2%以上あった人口増加率が、現在は1%を割り込んだ。この低下・減少は加速していく見通しだ。つまり、今後は、日本を追いかけるかのように人口が減少に転じる国が次第に増えていくとみられるのである。
 そして、今まさに日本が経験しているように、こうした世界的な少子・高齢化、人口減少は、持続的な成長の大きな足かせになりかねない。

 「生産年齢人口」という言葉がある。これは15歳から64歳の人口を指す言葉であり、戦後、バブル経済の崩壊までの日本が長らくそうであったように、この生産年齢人口が増えている時期は、景気の波を避けられないとはいえ、それでも総じて、その国の経済成長を実現・維持することが比較的容易である。

 しかし、いったん、その歯車が逆回転し始めた場合、事態は厳しいものになる。実際、日本の場合をみても、過去30年間のデフレ経済と、近未来の予測が示しているように、極めて深刻な事態が長期にわたって続いてきたし、抜け出すのが容易ではないとみられている。
 有効な対策を講じなければ、2030年代にかけて、成長率はゼロ近辺に下がり、その後はマイナスに転落するといった、シンクタンクの経済予測もよく目にするところである。

 そして、いずれ、世界の各国が、日本のような危機に直面するのは確実とみられ始めた。
 実際、一昨年には、韓国とロシアで人口増減率がマイナスとなった。このほか、中国も今年から人口減少局面に入るという。国連は、結果として、来年、インドの人口が中国を上回り世界一になる、と分析しているのだ。
 年初来の円安で、急激に条件が悪化しているものの、それでも日本や韓国はこれまで恵まれていた。これに対し、将来、人口減少に直面する国家は不幸である。というのは、日本や韓国は自国の人口が減少していても、外国人労働者を海外から招へいすることが比較的容易な状況にあるからだ。
 これに対し、アフリカ諸国が将来、人口減少に直面する頃には、世界規模で人口が減少しているはずだ。そうなると、海外からの労働力の供給力に頼ることが難しくなると予想されている。

 現在は、持続的な成長を妨げる問題と言えば、頭に浮かぶのは、気候変動対策である。確かに、会期を延長して、ようやく11月20日に行動計画の取りまとめに漕ぎつけた第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)の交渉過程を見ていても、カーボン・ニュートラルの実現は容易なことではない。
 しかし、今後、気候変動に代わって、人口減少が持続的成長の最大の障壁になる日が到来しも何ら不思議はない。そうなれば、世界は新たな大きな試練を迎えることになるのだ。
 事態の解決には、生産性の飛躍的な改善が必要になる。
 一足早くこの問題に直面した日本や先進諸国は、この問題に対する有効な処方箋を世界に示すことができるのだろうか。

2022年11月21日

COLUMN

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