一般社団法人 グローカル政策研究所

町田徹 21世紀のエピグラム

日銀の地銀支援をマイナス金利政策の行方と絡める議論は不毛だ

 日銀が11月10日に導入を発表した「地域金融強化のための特別当座預金制度」が、長引くマイナス金利政策の先行きを占う材料として、エコノミストなどの間でちょっとした論争のタネになっている。
 この制度は3年間の時限措置だ。地域の持続的発展に貢献する方針を掲げ、経費削減など経営基盤強化か、合併や経営統合の機関決定を行えば、対象の地域金融機関が日銀に預けている当座預金の金利を0.1%上乗せする内容である。
 背景には、金融機関の収益力の低下がある。マイナス金利政策、昨年秋の消費増税後の経済の減速、新型コロナウイルス感染症の流行が重なり、5大メガバンクの今年4~9月期の連結純利益が合計で前年同期比3割減となったばかりか、上場地方銀行(77行・グループ)の最終損益は6割が減益か赤字という惨状になっている。
 こうした中で、金融機関の惨状を無視して、マイナス金利政策の継続を強行してきた日銀が補助金まがいのリストラ・再編支援策導入を決めたので議論になったのだ。
 マイナス金利政策の限界が見えたとか、終わりの始まりだといった評価がある一方で、地方金融を憂うことなくマイナス金利を深掘りできる環境が整ったという声も出ているのである。
 しかし、そうした議論は見当外れだろう。 5年近くも日銀がマイナス金利政策を続けているのは、金融調節という以上に、潜在成長力の乏しさが大きいからだ。金融機関経営を優先してマイナス金利政策を覆すことなど不可能とみるべきである。
 むしろ、焦点は、地方金融機関が日銀の救いの手を活かせるか、だ。人口減少の中で、フィンテックやデジタル・トランスフォーメーションの暴風が吹き荒れる第4次産業革命の嵐を乗り切るには、まず体力を回復し、次いでIT分野に打って出る必要がある。が、保守的で反応が鈍いとの報道が後を絶たず、憂慮せずにはいられない。

2020年11月24日

COLUMN

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